もうずいぶん前のことです。
私は小学校で子どもたちと関わる仕事をしていました。
ある日のこと、中庭が見える窓の所にたくさんの子ども達が集まって何か叫んでいました。
何だろうと思って見に行くと、巣から落ちた小鳥のヒナをひとりの男の子が捕まえようとしていました。
その子はヒナを助けたかっただけです。
だけど・・・。
「ヒナに触っちゃダメ」
「絶対だめだから」
「やめて~!!」
みんな何とかやめさせようと必死です。
人間が触ってその臭いがついてしまったら、親鳥はもうヒナを受け入れてくれないから。
みんなもそのヒナのことを思って何とかやめさせようと一生懸命でした。
でもどんなにダメだと言われてもその子にはヒナをそのままにすることができなかったんです。
みんなの言葉に頷きながらもヒナのそばを離れようとしませんでした。
「だってそのままにしといて猫とかきたらどうするの?」
何とか自分の手で助けたい。
その子の思いはそれだけです。
結局私が説得したんですが、私はその子のやさしい気持ちが何よりもうれしくてその子のことを誇りに思いました。
実はその子、うちのジロウくんだったんです。
もうひとつ別のお話。
大好きな『しゃばけ』シリーズの中に「こわい」というお話があります。
シリーズの短編の中で特に印象に残っているお話の一つです。
こわい=孤者異は妖です。
同じ妖からも受け入れられず、御仏でさえ呆れて嫌うと言われている孤者異。
孤者異と関わると災難が起こる、不幸が降ってくる・・・そんな孤者異を哀れに思い受け止めようとしてもそれができた者はいません。
何とかしてやろうと思うことすら思い上がりなのかもしれないとまで言われる孤者異。
孤者異と関われば災難はその者だけでなく周りにも及ぶことになるからどうすることもできないのです。
それでも一太郎は孤者異に手を差し伸べずにはいられませんでした。
己も周りにいる者も、全て包み込んで流してしまう
心配を周囲にばらまくことになる
命まで落としかねない
それでも声をかけずにはいられなかったのです。
たくさんの人に心配をかけることになるし、勝手は許されない
それでも一人ぼっちの孤者異のことを思い涙を流す一太郎。
そのやさしさも孤者異には届きませんでした。
孤者異は家の中に入っておいでという一太郎の申し出を断ち切りまたどこかへと行ってしまいました。
そんなわけで一太郎のしたことで一太郎や周りの者が災難に巻き込まれることはなかったのですが、もしかしたらたくさんの人を傷つけ悲しませることになったかもしれません。
非難されて当然のことだったのかもしれません。
でも目の前で辛い思いをしている人(妖)に思わず手を差し伸べてしまう一太郎が私は大好きです。
自分の意見を堂々と述べられる人は立派だと思います。
尊敬します。
何が正しいって自分の判断で決めて自信を持って主張するって勇気がいりますよね。
私はいつもどうすれば正しいって人から見てもらえるかを気にしているのだと思います。
だから結局どちらが正しいとかって言えません。
ただひとつ言えるのは人からなんて言われようと見過ごすことができないそんなやさしい心を持った人が大好きだと言うことだけです。