今日でお休みが終わりなので、気合を入れてがんばって書いてた記事が消えちゃってショック。
まさに「失くしたもの」です。
でも落ちこんでいてもしょうがないのでもう一回。
ここからは映画ではなく映画には描かれていなかった原作(「失くした記憶の物語」)のお話。
このお話のキーワードのひとつが「失くす」ということではないかと思います。
ナオミが失くしたのは記憶。
ジェームズ(ユウジ)が亡くしたのはお兄さん。
映画ではお母さんも亡くしているナオミですが、原作では別の理由で失くしています。
もともとナオミは養女で実の両親はわかりません。
育ててくれた母親は偶然元彼と出会ってしまい、ナオミの父親と離婚して元彼と再婚、、子ども(ナオミにとっては妹)もいます。
だからもうちょっと複雑なんですよね。
もう一大切な人を亡くしている人がいます。
ウィルも父親を亡くしているのです。
そのことをウィルは「家庭の事情」と言い、「つらい時期だった」と記憶を失くしているナオミに話します。
「家族を亡くした人はおおぜいいる」「世界中のだれもが家族の一員を亡くしているはずだ」とも言っていますが、自分が父親を失くしていることは言いません。
ナオミはそのことを自分の父親から聞きます。
「父親を亡くしてから、母親のことをよく気づかってる。がんばり屋だよ。」
と。
ナオミたちが通う学校(日本のアメリカンスクールではありません)の先生でもあるウィルの母親は自分が教師として勤めることでウィルの学費を免除してもらえる学校を探して今住んでいるところへ移ってきました。
(ジェームズやエースは裕福な家庭の子って感じがしますが、ウィルは違います。)
小柄で人形のような繊細な顔をしていて、この人感情を傷つけるのはいともカンタンなことだろうとナオミに思わせる人でした。
復帰した初日で迷子になりやっとのことで教室にたどり着いたナオミを自分の娘のように強く抱きしめてくれるのですが、その日ナオミを家まで送ってくれたウィルも同じように別れ際にびっくりするほど強くナオミを抱きしめます。
小柄というところも含めてウィルは母親似なのかもしれません。
大切な人を亡くした2人の男の子。
お兄さんを亡くしたジェームズ。
お父さんを亡くしたウィル。
お兄さんの指輪を紐に通し首にかけているジェームズ。
お父さんんのレコードを部屋に飾り、ナオミに贈るCDの曲をその中から選ぶウィル。
(でもレコードはプレーヤーがなくて聴くことができません)
お兄さんを亡くしたことで心が不安定になってしまったジェームズ。
お母さん曰く「がんばりすぎ」でときどき体調を崩しているらしいウィル。
(でも学校を休んでもイヤーブックの編集は休みません。ナオミが復帰した日も休んでいたのですがそのことを知っていたら休まなかったと言っています)
2人が対照的だなと思います。
(元)女の子としてはどっちも気になるし、ときとして守ってあげたい気持ちにもなります。
私は絶対ウィル派。
もともとおたくっぽい人が好きです。
何かにこだわりを持っていて熱く語ることができる人。
知的でユーモアもあって会話が楽しくできる人。
何か抱えているものがあってもそれを表に出さない強い人。
そして限りなくやさしい人。
そんな人が好きなのですが、ウィルそのものって感じです。
それに少し似たところがあるんですよね、私も。
音楽が好きで、自分でCDを作るのが好きで、こだわりを持っているところとか「わかる、わかる」って感じ。
それと私も高校生活の最後に同じ病気をしたことがあるんです。
同じように「風邪かな」と思って気にしていなかったのがある朝突然息をすることもできなくなって病院へ担ぎ込まれたたという経験がありまして・・・。
あのときは自分で死んじゃうんじゃないかと思いました。
あと最後の試験を終えたら自由登校期間に入るという時期で、最後の試験を受けられないまま卒業式を迎えたわけですが、その前日久しぶりに学校に行った時にはまさに
「遠い昔、この学校に通ってたんだ」
って感じでした。
そんなこともあってウィルに感情移入してしまうんだと思います。
でもナオミがジェームズに惹かれるのもわからないわけではありません。
最初にこの本を読んだ時、ムスメにすすめたいと思いました。
そのころムスメはいろいろあって自分を見失ってしまっていて、悩み苦しんでいるのが離れて暮らしていてもわかっていたのでなんとかしてあげたいと思っていました。
ムスメには少し前までお付き合いしていた人がいました。
学校の先輩だったその人に直接会ったことはありませんでしたが、写真(音楽関係のサイトやパンフレットの写真)から受ける印象や、ムスメの話から浮かぶ人物像は決して好印象ではなく、逆にムスメのことが心配になる人でした。
それでも自分と一緒にいることでその人を助けてあげられるんじゃないかと言うムスメの気持ちもわかるかなって思ったんです。
人を好きになるってそういうことだよねって。
私には理解できない人だけど見守るしかないかなと思いました。
それとなく「やめたほうがいいんじゃ」みたいなことは何度か言いましたが。
心配だけど見守る・・・そんなところもウィルと似ているのかもしれません。
結局彼とは別れたのですが(彼の方に問題が起こったので)、他にも「失う」ということを経験し不安定になってしまったムスメにナオミやジェームズが重なり、
そういうことだってあるんだよ
と気持ちを楽にさせてあげたくて読むことをすすめました。
でもそのときには読むことはなく最近になって文庫本が出たので読んだそうです。
今のムスメはもう迷っていないので
「ウィルはいい人やね」
という私が喜ぶ感想をくれましたが・・・。
いろいろなものを失くすことで自分を見つめなおし、大切なものに気づいて成長していったナオミと、失くしたものの大きさに耐えられず崩れてしまうジェームズと、失くしたものも自分の支えにして強く生きていこうとするウィル。
大切なものを失くしたとき、人はどうなるのか、自分はどうするのか考えさせられるお話なのかなとあらためて読んでみて思いました。